藁にもすがる思いで・・・ 
(2001.11)


父の肺転移後、私達の不安は日々増大し、
いよいよ癌どもに追いつめられたといった切迫感でいっぱいだった。

最悪な事に、父は元々白血球・血小板が少なく、
今までは何不自由なく生きてきたが、
抗がん剤治療を必要とする今、この体質を恨む結果となってしまった。

テレビの報道番組で「これほどまでに抗がん剤治療が進んでいる」
といった内容の番組を見るにつけ、
それすら受けられない父の事を思うと憤りを感じてしまう。

半年前、大腸癌・肝転移部を切除し、
再発・転移を恐れつつも懸命に通い続けたK大病院。
しかし、今回肺転移が判明した今、
父はK大病院に完全に見放された・・・。
まぁ大学病院なら当然の事であり、予想していた結果ではあったが。
そもそも大学病院は、自らの治療成績を優先するものである。
治療効果の得られない患者はもはや不要なのだろう。

両親と出向き、いくら食い下がってみようとも、
こちらの顔を見ようともせず、冷淡な対応を続ける彼らに、
私はもはやこれ以上無駄な時間を費やす事は無意味であると確信した。
しかし、父はというと・・・未だK大病院を信じ、希望を見出そうとしている。
あまりに酷な現実・・・。
父を何とか救いたい。

私と母は大阪のとある病院にセカンドオピニオンを求めに出向いた。
しかしここでも辛い現実ばかりを聞かされる結果となった。
「私なら、この段階まできている場合・・・
もはや積極的な治療は勧めません」
「抗がん剤治療をするにしても、この血液データではリスクが大きすぎます」
「このまま何もせず今まで通り過ごす事も1つの治療法ですよ」
まぁ予想通りの医師からの言葉の数々・・・。
何もしない事も1つの治療法。
確かに分かる。
しかし目の前の父は何の自覚症状もなくこんなに元気なのだ。
なのにもう全ての治療を諦めねばならないのか?


母と2人して背を落として帰宅する。
父に希望を与えたい・・・
しかしこの状況下において一体どんな希望を与えられるというのか。
母から今回の医師からの言葉を聞かされ、
父は「やっぱりな・・・」とただ一言。
決して取り乱す事なく相変わらず冷静な父。
「もう俺のために駆けずり回るのはやめろ。
どれほど頑張っても限界があるんだから・・・」
父の言ったこの言葉、果たして本心なのだろうか。
もし本心だとすれば、私は父を不必要に追いつめているだけなのか・・・。